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2012年11月30日

愛についてのデッサン 佐古啓介の旅-野呂邦暢

前回書いた「昔日の客」つながりで、野呂邦暢の本を読む。みすず書房で出している、「大人の本棚シリーズ」の一冊。「愛についてのデッサン 佐古啓介の旅」である。

愛についてのデッサン――佐古啓介の旅 (大人の本棚) [単行本] / 野呂 邦暢 (著); みすず書房 (刊)

この作品は「野性時代」1978年7月号から12月号まで6回に渡って連載され、1979年に一度角川書店から刊行されている。
そちらは残念ながら絶版になっているようだが、2006年にみすず書房から出されたものは、今でも手に入る。
「大人の本棚シリーズ」からは、他にも二冊野呂邦暢の本が出ているので、彼の愛読者には嬉しい事だろう。
カバーの柔らかい、表紙の色がきれいなシリーズだ。

作者の野呂邦暢は、この角川版が出た翌年、42歳で亡くなっている。まだまだ若い芥川賞作家の早すぎる死であった。

彼は若いころ「昔日の客」の著者である、関口良雄の営む古書店へ度々出向いては、なけなしの金をはたいて本を買っていたそうで、この店主に叱られたり優しくされたりしながら、古書店を舞台にした小説の構想を練っていたのではないだろうか。

「愛についてのデッサン 佐古啓介の旅」は、古書店の主である父を亡くした二十五歳の青年が、妹とともに店を引き継いで成長していく物語である。本好きなら、そそられるテーマではないか?

神田にある出版社の若い編集者が、仕事を辞めて父の古書と店を引き継ぎ、旅をしながら本と客をつなぐ謎を詳らかにし、つかの間触れ合う美女に後ろ髪引かれる物語は、ちょっと「浅見光彦シリーズ」に似ていなくもない。

一話完結ではあるが、六作品を通して紐解かれるのは、長崎出身で、自分の過去を何も語らないままに逝った父の来歴である。

優しい文章と、昭和の懐かしい生活の描写は心惹かれるものがあるのだが、連作最後に明かされる若い頃の父の秘密が、ある人物にあっさり全て語られてしまうのが少し惜しい。
雑誌連載で、紙面に限りがあったのかもしれないが、出来ればもう少し書き足して盛り上げて貰いたかった。
作者もまた、このシリーズを続けてみたかったのではあるまいか。

ちなみにタイトルの「愛についてのデッサン」は、福岡県の医師、詩人である丸山豊が出した詩集のタイトルを、許可を受けて付けさせて貰った、と後書きにある。
この詩集も、若き古書肆佐古啓介の思い出の本として、作中に現れるのである。

恋心は抱いても押しの弱い啓介、しっかり者の妹、本絡みの依頼を持って店を訪れる院生の友人、博学な図書館員など、ドラマ化しても面白そうな登場人物ばかりなのだが、ラノベと異なるのは彼らの容貌に関してはほとんど触れていない点だろうか。
作中に現れる数々の古書と稀覯本と共に、彼らの佇まいを想像するのも楽しいだろう。

ネットも携帯も電子書籍も無い、本の存在感が今より重かった時代の物語である。
posted by 風花散人 at 21:07| 北海道 ☔| 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月25日

2012年11月24日のつぶやき

posted by 風花散人 at 00:01| 北海道 ☔| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月24日

昔日の客-関口良雄

関口良雄は古書店山王書房の店主であった。昭和二十四年に開店したこの店には、尾崎一雄、尾崎士郎、上林暁、三島由紀夫といった著名な文士たちが顔を出し、多才で話好きな店主と交流を深めていた。

「昔日の客」は、この古書店の店主が敬愛していた作家や、店を訪れた様々な客たちの思い出話などをしみじみと綴った随筆集である。
元々、同人誌などに掲載していたものに、幾つか書きおろしを加えて昭和五十三年に三茶書房から出版されたのだが、残念なことに主はその前年に病死されている。

この絶版になっていた本を、平成二十二年に夏葉社が再販した。
新刊書店や図書館で、鴬色の布でシンプルに装丁された単行本を見つけることが出来るだろう。
古書店の帳場から、本や作家たちの姿を眺めているような気分でその雰囲気に浸れる良書だ。

ちなみに、タイトルの「昔日の客」は、芥川賞作家で四十代で早逝した野呂邦暢が、店主に自著を送った際、見返しに書き付けた一文によるようだ。

「昔日の客より感謝をもって」野呂邦暢 と。

彼も又、若い頃に山王書房に出入りし、店主に厳しくされたり優しくされたりしながら、文学への志を胸に秘めていたのだろう。

電子書籍の発展も良いことではあるが、本や店があるからこそ生まれる、人との交流や想いは、どうして捨てられるものではない。
本好きには一読をお勧めする。
個人的には、豪快で陽気な尾崎士郎の描写が好きだ。


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posted by 風花散人 at 01:34| 北海道 ☔| 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月11日

2012年11月10日のつぶやき

fuukasanjin / 風花散人
「昔日の客」を読んでいる。 at 11/10 22:18
posted by 風花散人 at 00:01| 北海道 ☔| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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